遺言の種類と選び方(和歌山で遺言を考える方へ)

遺言は、亡くなったあとに財産を誰にどう引き継ぐかを、ご本人があらかじめ決めておくための書面です。ただ、民法が決めた方式に沿って作らなければ、遺言として認められません(民法960条)。満15歳になれば、ひとりで遺言を書くことができます(同法961条)。

このページでは、和歌山で遺言を考えている方に向けて、3つの方式の違い、法務局に預ける制度、和歌山県内の手続きの窓口を、条文に沿ってまとめました。(2026年10月時点の法令にもとづいています)

3つの方式を表で比べる

ふだん使われる遺言(普通の方式)は、自筆証書・公正証書・秘密証書の3つです(民法967条)。

自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言
作る人 本人が手書き(財産目録だけはパソコンやコピーでも可) 本人が話した内容をもとに公証人が作成 本人が署名。本文はパソコンや代筆でも可
証人 いらない 2人以上 2人以上(公証人1人も)
本人の押印(2026年10月現在) 必要 いらない 必要(封印も)
原本の置き場所 自宅など。法務局に預けることもできる 公証役場(電子データの原本は日本公証人連合会のシステム) 本人が保管する
家庭裁判所の検認 必要(法務局に預けたものは不要) 不要 必要
かかる費用 紙とペンだけ。法務局に預けるなら1通3,900円 公証人の手数料(財産の額などで変わる) 公証人の手数料

自筆証書遺言(民法968条)

紙とペンがあれば、思い立った日に自宅で書けるのが自筆証書遺言です。そのかわり、決まりを一つでも外すと無効になるおそれがあります。

  • 全文・日付・氏名を自分の手で書き、印を押す(968条1項)。パソコンで打った本文や、家族に代わりに書いてもらった本文は認められません。
  • 財産目録は手書きでなくてよい。通帳のコピーや登記事項証明書を目録として付けることもできますが、目録の各ページ(両面に記載があれば両面とも)に署名し、印を押します(同条2項)。
  • 書き間違いの直し方も決まっている。直した場所を示し、変更した旨を書き添えて署名し、その場所に印を押さないと、訂正の効力が生じません(同条3項)。直す箇所が多いときは、全部書き直すほうが確実です。
  • 夫婦で1枚に書くことはできない。2人以上が同じ書面で遺言をすることは禁じられています(民法975条)。
  • あとから書き直せる。遺言の方式に従えば、いつでも全部または一部を撤回できます(民法1022条)。

2026年の民法改正で、押印は「いらなくなる」予定です

2026年6月17日に「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)が成立し、6月24日に公布されました。この改正で、自筆証書遺言の要件から「印を押す」ことが外れ、全文・日付・氏名を自書すれば足りるようになります(改正後の968条1項)。財産目録の各ページも、押印はいらず署名だけでよくなります(同条2項)。訂正も押印はいりませんが、変更した場所を示し、変更した旨を書き添えて、そこに署名する必要があります(同条3項)。秘密証書遺言でも、本人の押印と封印は求められなくなります(改正後の970条)。

ただし、この部分が始まる日は「公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日」とされています。2026年10月13日の時点で、その日を決める政令は出ていません(法務省の案内とe-Gov法令検索で確認)。

ですから、今書く自筆証書遺言には、これまでどおり印を押してください。施行日が決まりしだい、このページも書き改めます。

同じ改正では、電子データなどで作って法務局が保管する「保管証書遺言」という新しい方式もできる予定です。こちらは公布から3年以内に始まるとされ、まだ使えません。

公正証書遺言(民法969条・969条の2)

公証人が関わるので、方式の誤りで無効になる心配がほとんどなく、検認もいりません(民法1004条2項)。相続人どうしの話し合いがこじれそうなときや、不動産がいくつもあるときに向いている方式です。

  • 証人2人以上の立会いのもと、遺言の中身を本人が公証人に口頭で伝える(969条1項)。話すことが難しい方は、通訳を通すか、自分で書いて伝えることができます(969条の2第1項)。
  • 2025年10月1日から、作り方の細かい決まりは公証人法に移りました(969条2項)。公正証書は原則として電子データで作られ(公証人法36条)、公証人が読み聞かせるか画面で見せて内容を確かめたうえで(同法40条1項)、本人と証人は署名かそれに代わる方法をとります(同条5項)。本人の押印はいりません。公証人が相当と認めれば、ウェブ会議の方法で行うこともできます(同法37条2項・40条3項)。
  • 証人になれない人がいます。未成年者、推定相続人と受遺者、その配偶者と直系血族、公証人の配偶者・4親等内の親族・書記・使用人です(民法974条)。ご家族に頼めないことが多いため、証人の手配も含めてご相談ください。
  • 公証役場に行けなくても作れる。病気などで外出が難しいときは、公証人が自宅や病院に出張して作成することができます。

和歌山県内の公証役場

公証役場 所在地
和歌山合同公証役場 和歌山市八番丁11 日本生命和歌山八番丁ビル3階
橋本公証役場 橋本市市脇1-3-18 橋本商工会館3階
田辺公証役場 田辺市下屋敷町37 西原ビル2階
御坊公証役場 御坊市湯川町小松原549-1 アスリービル1階
新宮公証役場 新宮市緑ケ丘2-1-31 カマツカビル3階

日本公証人連合会「公証役場一覧(和歌山)」による(2026年10月13日に確認)。

秘密証書遺言(民法970条)

中身を誰にも見せずに、「遺言がある」という事実だけを公証人に証明してもらう方式です。

  • 本人が書面に署名して印を押し、封をして、書面に使ったのと同じ印で封印します(970条1項1号・2号)。
  • 封をした書面を公証人1人と証人2人以上の前に出し、自分の遺言であることと、書いた人の氏名・住所を述べます(同項3号)。
  • 公証人が提出の日付と本人の申述を封紙に書き、本人・証人とともに署名して印を押します(同項4号)。

公証人も中身を確かめないので、内容に不備があっても気づかれないまま残るおそれがあります。亡くなったあとは検認が必要です。なお、秘密証書としての方式に欠けるところがあっても、自筆証書遺言の要件を満たしていれば、自筆証書遺言として効力を持ちます(民法971条)。

特別な方式の遺言

普通の方式で作る余裕がない場面のために、民法は特別の方式も用意しています。病気などで死期が迫った方の遺言(976条)、伝染病のため隔離された方の遺言(977条)、船に乗っている方の遺言(978条)、船の遭難で死期が迫った方の遺言(979条)です。

たとえば死期が迫った方の遺言は、証人3人以上が立ち会い、そのうち1人が本人の話を書き取ります。証人の1人または利害関係人が、遺言の日から20日以内に家庭裁判所へ確認を請求し、その確認を得なければ効力が生じません(976条4項)。あくまで非常の手段なので、元気なうちに普通の方式で用意しておくのが基本です。

法務局の「自筆証書遺言書保管制度」

自筆証書遺言の弱点である「なくす・書き換えられる・見つけてもらえない」を補うため、2020年7月10日に始まった制度です(法務局における遺言書の保管等に関する法律)。

  • 本人が法務局に出向いて申請する(同法4条6項)。代理人による申請や郵送はできません。
  • 封をしないまま、決められた様式で持ち込む(同法4条2項)。用紙の大きさや余白の取り方が決まっています。
  • 手数料は1通3,900円(法務省の案内)。
  • 預けた遺言は検認がいらない(同法11条)。
  • 相続人に知らせる仕組みがある。亡くなったあと相続人の誰かが証明書の交付や閲覧を受けると、ほかの相続人などにも、遺言が預けられていることが通知されます(同法9条5項)。また、本人が指定した人(3人まで)に、亡くなったことが確認された段階で通知を出す仕組みもあります。
  • 中身の相談や有効性の保証はない。法務局は遺言の内容についての相談には応じておらず、預けた遺言が有効であることを保証するものでもありません。中身は専門家と詰めてから預けるのが安心です。

和歌山県内の遺言書保管所

申請できるのは、本人の住所地・本籍地・本人が持っている不動産の所在地のいずれかを受け持つ保管所です(同法4条3項)。和歌山地方法務局の案内では、このいずれかが和歌山県内にあれば、県内のどの保管所でも申請できます。どの手続きも事前の予約が必要です。

保管所 所在地
和歌山地方法務局(本局) 和歌山市二番丁3 和歌山地方合同庁舎
同 橋本支局 橋本市東家5丁目2番2号 橋本地方合同庁舎
同 田辺支局 田辺市文里1丁目11番9号 田辺港湾合同庁舎
同 御坊支局 御坊市薗369番地6 御坊法務総合庁舎
同 新宮支局 新宮市緑ケ丘3丁目2番64号

和歌山地方法務局「和歌山県内の遺言書保管所一覧」による(2026年10月13日に確認)。

遺言書が見つかったら──検認と和歌山家庭裁判所

手書きの遺言(法務局に預けたものを除く)や秘密証書遺言を持っている人、見つけた相続人は、亡くなったことを知ったあと遅滞なく家庭裁判所に出して「検認」を受けなければなりません(民法1004条1項)。封がしてある遺言は、家庭裁判所で相続人などの立会いのもとでしか開けられません(同条3項)。検認をせずに遺言を執行したり、家庭裁判所の外で開けたりすると、5万円以下の過料の対象になります(民法1005条)。

検認は、遺言書の形や日付・署名などをその日の状態のまま記録して、偽造や変造を防ぐ手続きです。遺言が有効か無効かを決めるものではありません。

申し立てる先は、亡くなった方の最後の住所地を受け持つ家庭裁判所です(家事事件手続法209条1項、民法883条)。和歌山県では、和歌山家庭裁判所の本庁(和歌山市二番丁1番地)と、田辺・御坊・新宮の各支部などが窓口です。和歌山市・海南市・岩出市・紀美野町などにお住まいだった方なら、本庁が受け持ちます。

どの方式を選ぶか──和歌山でのご相談から

  • 相続人の間でもめそうな事情がある、不動産が複数ある:公正証書遺言で、内容と形式の両方を固めておくのが安心です。
  • まず手軽に書いておきたい、でもなくすのが心配:自筆証書遺言を書き、法務局に預ける方法があります。
  • 体調の都合で外出が難しい:法務局の保管制度は本人が出向く必要があるため使えません。公証人の出張による公正証書遺言を検討します。

どの方式でも、「誰に何を」をはっきり書けているか、遺留分(一定の相続人に保障された取り分)への配慮があるか、で後の手続きの進みやすさが変わります。


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出典

  • 民法 960条・961条・967条〜979条・975条・1004条・1005条・1022条・883条(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
  • 民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)による改正後の民法968条・970条(e-Gov法令検索・未施行の版)https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
  • 法務省「民法等の一部を改正する法律(成年後見及び遺言の制度の見直し)について」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00410.html
  • 公証人法 36条・37条・40条(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/141AC0000000053
  • 法務局における遺言書の保管等に関する法律 4条・9条・11条(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/430AC0000000073
  • 家事事件手続法 209条(e-Gov法令検索)https://laws.e-gov.go.jp/law/423AC0000000052
  • 法務省「自筆証書遺言書保管制度」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html (手数料 https://www.moj.go.jp/MINJI/09.html /通知 https://www.moj.go.jp/MINJI/10.html /よくあるご質問 https://www.moj.go.jp/MINJI/11.html)
  • 和歌山地方法務局「自筆証書遺言書保管制度」https://houmukyoku.moj.go.jp/wakayama/page000001_00135.html ・「和歌山県内の遺言書保管所一覧」https://houmukyoku.moj.go.jp/wakayama/page000001_00416.pdf
  • 日本公証人連合会「公証役場一覧(和歌山)」https://www.koshonin.gr.jp/list/wakayama ・「遺言」https://www.koshonin.gr.jp/notary/ow02
  • 裁判所「和歌山地方・家庭裁判所の管轄区域」https://www.courts.go.jp/about/sosiki/kankatu/wakayama/index.html
  • 裁判所「遺言書の検認」https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_17/index.html ・「管内の裁判所の所在地(和歌山)」https://www.courts.go.jp/wakayama/about/syozai/index.html

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