「身寄りのない知人が亡くなり、調べても相続人が一人もいなかった」「相続人全員が相続放棄(家庭裁判所に申し出て、財産も借金も一切受け継がないこと)をした」——このように相続人がいない場合、財産はどうなるのでしょうか。ここで登場するのが相続財産清算人です。
相続人がいない相続とは
法定相続人(民法で決められた、相続人になる人。配偶者・子・親・兄弟姉妹など)が誰もいない、あるいは相続人全員が相続放棄をした場合、遺産を承継(権利や財産、地位などを、前の人から受け継ぐこと)する人がいない状態になります。この財産は、法律上「相続財産法人」と呼ばれ、遺産そのものが、会社のように一つの権利の持ち主として扱われます。この財産を、誰かが管理・清算(財産をお金に換えて借金を返すなど、後始末をすること)する必要があります。
なお、「身寄りがない」「一人暮らしだった」というだけで、法律上の相続人がいないことにはなりません。 子や父母だけでなく、兄弟姉妹や、兄弟姉妹が先に亡くなっている場合などにはその子である甥・姪まで相続人となるため、戸籍をたどって法定相続人の有無を確認する必要があります。「孤独死」「おひとりさま」と「相続人不存在」(法律上の相続人が一人もいないこと。いるか分からない場合も含む)は別の問題です。

相続財産清算人とは
相続財産清算人は、家庭裁判所が選任(裁判所などが、その役目に就く人を選んで決めること)する人で、主に次の役割を担います。被相続人(亡くなって財産を残した人)の債務(借金など、他人にお金などを支払わなければならない義務)等を清算します。家庭裁判所による特別縁故者(故人と暮らしのお金を共にしていた人や、看病・介護に努めた人など、故人と特に縁が深かった人)への財産分与(家庭裁判所が、特別縁故者に、借金などを払って残った遺産の全部または一部を分け与えること)の審判(家庭裁判所が、申立てを受けて判断し、結論を決める手続き)があれば、これに従って分与手続きを行います。残余財産(借金などを支払ったあとに残った財産)は、国庫(国の財産を入れる先。「国のもの」という意味)に引き継ぎます。
2023年4月1日施行の民法改正で、従来の「相続財産管理人」が「相続財産清算人」に改められました。
なお、「相続財産管理人」という言葉自体がなくなったわけではありません。同じ改正で新設された民法897条の2は、相続財産を保存するための「相続財産の管理人」を家庭裁判所が選任できると定めています。選任は、利害関係人(その手続きの結果で、自分の権利や義務に影響を受ける人。相続人や債権者など)や検察官(社会全体の利益のために、裁判所に手続きを求めることもできる国の職員)の申立て(裁判所に対して、手続きを始めるよう求めること)によって行われます。相続人がいるかどうか明らかでない場合の清算を担うのが「相続財産清算人」(民法952条)、相続財産の保存のために選任されるのが「相続財産の管理人」(民法897条の2)で、両者は別の制度です。
手続きの流れ(2023年改正で大幅に短縮されました)
- 選任の申立て — 利害関係人または検察官が、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に申し立てます(民法952条1項)
- 清算人選任+相続人捜索の公告(国の広報紙などに載せて、広く一般に知らせること。期間は6ヶ月以上) — 家庭裁判所が、清算人を選任したことと、「相続人がいるなら、決められた期間内に権利を主張してください」ということを、官報(国が発行する広報紙。法令や裁判所の公告などが載る)に公告します。この期間は、6ヶ月以上にしなければなりません(民法952条2項)。改正前は「選任の公告」と「相続人捜索の公告」が別々でしたが、改正でこの2つが1本の公告に統合されました
- 相続債権者(亡くなった方にお金を貸していたなど、遺産から支払いを受ける権利がある人)・受遺者(遺言によって財産を贈られる人。相続人とは限らない)への請求申出(債権者などが、支払いを求めて名乗り出ること)の公告(2ヶ月以上・2と並行) — 清算人が、2ヶ月以上の期間を定めて公告します。この2ヶ月以上の期間は、2の公告の期間(6ヶ月以上)の中で終わるように定めなければなりません(民法957条1項)。2と3は順番に行うのではなく、2の6ヶ月の中で並行して進みます
- 債権者・受遺者への弁済(借金などを支払って、債務を消すこと。民法957条2項)
- 相続人不存在の確定 — 2の公告の期間(6ヶ月以上)の中で、相続人として権利を主張する人がいなければ確定します(民法958条)
- 特別縁故者への財産分与の申立て(2の公告の期間が終わってから3ヶ月以内)
- 残余財産の国庫帰属(残った財産が国のものになること。民法959条)
改正前は複数の公告を順次行う必要がありましたが、2023年4月1日施行の改正により公告手続きが整理されました。現在は、相続財産清算人の選任後に行われる相続人捜索の公告期間が6か月以上とされ、その期間内に相続人として権利を主張する者がいなければ、相続人不存在が確定します。
なお、この「6か月」は清算人選任後の公告期間の最低期間であり、申立ての準備・家庭裁判所での審理(裁判所が、事情や資料を調べて判断に向けて検討すること)・財産の換価(財産を売って、お金に換えること)や弁済・特別縁故者への財産分与などを含めた手続き全体が6か月で終了するという意味ではありません。

申立てにかかる費用(予納金にご注意ください)
この手続きで最も注意が必要なのが、予納金(手続きの費用や清算人の報酬に充てるため、前もって裁判所に納めるお金)です。
相続財産清算人の報酬や、手続きにかかる費用は、本来は相続財産から支払われます。しかし、相続財産が少なく、それだけでは費用を賄えないと見込まれる場合には、家庭裁判所から申立人に対して予納金の納付を求められることがあります。
予納金の額は、相続財産の内容や見込まれる作業量、申立て先の家庭裁判所によって異なります。まとまった金額になることもあるため、申し立てる前に、相続財産の内容と見込まれる費用を確認しておくことが重要です。なお、納付した予納金が必ず全額返還されるわけではありません。予納金のうち、手続終了時に使用されずに残った金額があれば、その残額が申立人に還付(納めたお金のうち、使われなかった分が戻ってくること)されます。
このほか、申立てには収入印紙(税金や手数料を納めるときに使う、国が発行する切手のような紙)、連絡用の郵便切手、官報公告の費用が必要です。金額は変更されることがあるため、申立て先の家庭裁判所でご確認ください。

特別縁故者への分与
被相続人と生計を同じくしていた者(暮らしのお金を共にしていた人。婚姻届を出さずに夫婦として暮らしていた相手など)、療養看護(病気やけがをした人の、看病や介護)に努めた者、その他被相続人と特別の縁故があった者は、特別縁故者として財産の分与を家庭裁判所に申し立てられる場合があります(民法958条の2)。
申立ての期限は、相続人捜索の公告(民法952条2項)で定められた期間が終わってから3ヶ月以内です(民法958条の2第2項)。この期限を過ぎると申立てはできなくなります。
「長年連れ添ったが籍を入れていなかった」「献身的に介護した」といったケースで関係します。

こんな場合に関係します
- 内縁(婚姻届を出していないが、事実上夫婦として暮らす関係)の配偶者や、事実上の家族として財産を受けたい
- 大家・債権者として、借主・債務者の遺産を清算してほしい
- 身寄りのない親族の財産を、誰も手続きできず困っている
司法書士に相談するメリット
当法人では、次のようなサポートを行っています。
- 相続財産清算人の選任申立書類の作成
- 戸籍収集による、相続人がいないことの確認
- 相続財産の調査と、見込まれる費用の整理
- 特別縁故者としての分与の申立書類の作成
- 当法人所属の司法書士が家庭裁判所から選任された場合の、相続財産清算人としての業務
なお、清算人の候補者を挙げることはできますが、誰を清算人として選任するかを判断するのは家庭裁判所です。 また、選任の申立ても特別縁故者の申立ても家庭裁判所の手続です。司法書士は、申立書など家庭裁判所に出す書類を作成し、その作成についてのご相談に応じることができます。ただし、これらの家庭裁判所の手続について、申立人の代理人(本人に代わって、契約や手続きをする権限を持つ人)として手続を進めることはできません。
「相続人がいなくて、どうすればいいか分からない」段階からご相談いただけます。
よくあるご質問
Q. 内縁の妻ですが、財産を受け取れますか?
A. 特別縁故者として分与を申し立てられる場合があります。相続人捜索の公告の期間が終わってから3ヶ月以内という期限にご注意ください。なお、申立てができることと、分与が認められることは別です。分与するかどうか、どの範囲で分与するかは家庭裁判所が判断します。 生計を同じくしていたことや療養看護の実態を、資料によって示せるように準備しておくことが大切です。
Q. 相続人全員が相続放棄をしました。もう関係ないですか?
A. 放棄の時に相続財産を実際に自分の管理下に置いていた場合は、相続財産清算人などに引き渡すまでの間、自分の財産を扱うときと同じ程度の注意を払って、その財産を今の状態に保つ義務が残ります(民法940条1項)。空き家の鍵を管理しているといった場合には、家庭裁判所に清算人の選任を申し立てることを検討する意味があります。

Q. 亡くなった方と不動産を共有(1つの物を、複数の人がそれぞれの割合で一緒に持つこと)しています。
A. 共有者の一人が相続人のいないまま亡くなったとき、その人の持分(共有している物について、各人が持つ権利の割合)は、ほかの共有者のものになるとされています(民法255条)。ただし、先に特別縁故者への分与が検討され、分与されなかった場合に、ほかの共有者のものになります。どの順番で、どの手続きが必要になるかを確認して進める必要があります。

Q. 手続きにはどのくらいかかりますか?
A. 2023年の改正で短縮され、公告期間は最短6ヶ月です。ただしこれは公告に要する期間であり、申立ての準備や選任までの期間、財産の換価・弁済、特別縁故者への分与の審判、国庫帰属までを含めると、全体では1年以上を要することもあります。不動産が含まれる場合は、売却に要する期間にも左右されます。

Q. 「相続財産管理人」とは違うのですか?
A. 別の制度です。相続人がいるか明らかでない場合の清算は「相続財産清算人」、財産の保存のために選任されるのが「相続財産の管理人」(民法897条の2)です。

まとめ・ご相談
- 身寄りのない親族が亡くなり、相続人がいない
- 内縁の配偶者として財産を受け取りたい
- 相続人不存在の財産の手続きに困っている
「どうすればいいか分からない段階からご相談いただけます。」 和歌山オフィス(JR和歌山駅東口から徒歩13分・駐車場1台分)で承ります。郵送・オンラインでのご相談にも対応しています。
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ARIAグループがいちばん大事にしているのは、「その先」です。 身寄りがないように見えても、戸籍をたどると相続人が見つかることがあります。また、清算人の選任を申し立てるか、特別縁故者として分与を申し立てるかによって、遺された家や預金の行き先が変わります。目の前の手続きだけを見て決めると、何年も先になって、ご親族やまわりの方が困ることがあります。司法書士法人ARIAグループでは、その先に起きることまで見たうえでご提案します。
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※本記事は一般的な制度の解説です(2026年10月時点)。紛争性のある事案は提携弁護士、税務は税理士、不動産の売買・仲介はグループ会社(株式会社ARIA Partners)等の宅地建物取引業者をご案内します。記載は執筆時点の法令に基づくもので、結果を保証しません。税理士・弁護士・土地家屋調査士・宅地建物取引業者への依頼は、それぞれの専門家との別個の契約となり、これらへの依頼を当法人の司法書士業務の受任条件とするものではありません。
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