和歌山の山林・農地を国に引き取ってもらう|負担金・境界・森林法と農地法の届出

親から受け継いだ山や田畑が、和歌山にそのまま残っている。耕す人はいないし、買い手もつかない。それでも草は伸びるし、境界の杭がどこにあるのかも分からない。

こうした土地を、一定の要件のもとで国に引き取ってもらえるのが相続土地国庫帰属制度です(2023年4月開始)。

ただし、山林と農地には、宅地とは違う難しさが3つあります。 森林は負担金が必ず面積算定になり、上限がないこと境界と手入れの状態の両方が審査されること、そして国庫帰属とは別に森林法・農地法の届出があることです。この記事では、その3点を中心に整理します。

山林・農地の負担金は、区分と面積で変わります

費用は2つに分かれます。申請時の審査手数料(土地1筆あたり14,000円・収入印紙)と、承認された後に納める負担金です。審査手数料は却下・不承認でも戻りません。

負担金は「国が引き取った土地を10年間管理する費用」という考え方で、原則は20万円です。ところが、森林はこの原則から外れ、必ず面積に応じた算定になります。

森林の負担金(全6区分)

法務省が公表している算定方法は次のとおりです(1,000円未満は切り捨て)。

面積 負担金の算定式
750㎡以下 地積 × 59円 + 210,000円
750㎡超 1,500㎡以下 地積 × 24円 + 237,000円
1,500㎡超 3,000㎡以下 地積 × 17円 + 248,000円
3,000㎡超 6,000㎡以下 地積 × 12円 + 263,000円
6,000㎡超 12,000㎡以下 地積 × 8円 + 287,000円
12,000㎡超 地積 × 6円 + 311,000円

実際に当てはめると、次のようになります。

  • 500㎡ …… 500×59+210,000=23万9,000円
  • 1,000㎡(約1反) …… 1,000×24+237,000=26万1,000円
  • 3,000㎡ …… 3,000×17+248,000=29万9,000円
  • 10,000㎡(1ヘクタール) …… 10,000×8+287,000=36万7,000円

区分が上がるごとに1㎡あたりの単価が下がる設計になっているため、面積が2倍になっても負担金が2倍になるわけではありません。 1ヘクタールの山でも36万7,000円です。

ただし、面積による上限はありません。 最後の区分は「地積×6円+31万1,000円」で頭打ちにならないため、50ヘクタールの森林なら331万1,000円になります。「山林なら数十万円で済む」とは限りません。 筆数が多ければそのぶん積み上がりますし、境界の調査や測量、残置物の撤去、専門家への報酬が別途かかることもあります。まずはご自身の土地の地積で計算してみてください。

農地は、場所によって扱いが変わります

田・畑も原則は20万円ですが、次のいずれかに当たると面積に応じた算定になります。

  • 市街化区域または用途地域が指定されている地域内の農地
  • 農用地区域内の農地
  • 土地改良事業等の施行区域内の農地

和歌山で問題になりやすいのは2つ目と3つ目です。市街化区域から離れた田畑でも、農業振興地域の農用地区域(いわゆる青地)に入っていれば面積算定になります。250㎡以下で「地積×1,210円+208,000円」、4,000㎡超で「地積×640円+608,000円」です。

ご自身の田畑が農用地区域に入っているかは、市町村の農政担当課で確認できます。 登記地目だけでは判断できません。

なお、負担金の区分は登記地目ではなく、現況を踏まえて判断されます。 登記上「山林」でも森林区分になるとは限らず、逆もあります。算定に使う面積は現況ではなく登記記録の地積です。

土地改良区の区域内の農地は、賦課金にご注意ください。 問題になるのは未払い分だけではありません。国庫帰属した後に国が通常の管理費用以外の金銭債務を負担することが確実と認められる土地、および申請者が所有者として負っている金銭債務を、国庫帰属に伴って国が承継することとなる土地は、いずれも不承認の対象です(施行令4条3項4号・5号)。「滞納分を払えば足りる」とは限りません。 土地改良区と法務局に確認し、審査が終わるまでに必要な解消手続きを済ませておく必要があります。

山林で大きな課題になりやすいのが、境界です

この制度には、そもそも申請ができない却下要件(法2条3項)と、申請はできても承認されない不承認要件(法5条1項)があります。

山林でとくに問題になりやすいのが、却下要件の5号です。

五 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地

山では、境界の目印が尾根や沢、古い石、木の傷といったものだけで、代替わりのたびに分からなくなっていきます。「どこからどこまでが自分の山か、誰も説明できない」という状態は珍しくありません。

ただし、測量まで必須ではありません

ここは安心していただいてよい点です。「境界が明らかでない」とは、現地で土地の範囲と隣地との境を確認できないという意味であり、測量図や境界確認書の提出が常に必要とされているわけではありません。

  • 境界標がない場合は、紅白ポールやプレートなどの目印の設置を求められることがあります
  • 筆界未定であることや、法務局に地図がないことだけで直ちに却下されるわけではありません
  • 申請後に問題が判明しても、審査が終わるまでに状況を改善できれば足りる場合があります
  • 隣地所有者との立会いや境界確認書は、申請時の必須の添付書面ではありません。 法務省も「承認申請の際の必須の添付書面ではありません」としています(ただし境界確定書等があれば審査が円滑に進む可能性があります)

必要なのは、申請する方が認識している土地の範囲と境界点を、現地で示せること、そして隣地の所有者との間に認識の相違や争いがないことです。隣地の所有者への確認は、法務局が照会して行います。

とはいえ、隣地の所有者もまた県外に出ているというのが、和歌山の山林でよくある状況です。 認識が食い違いそうな場合は、事前に立会いや調整をしておくほうが結果的に早く進みます。境界の確定や測量が必要になる場合は、土地家屋調査士の業務になりますので、当法人から連携してご案内します。

そのほか、山林・農地で問題になりやすい要件

  • 建物がある土地は申請できません(却下要件)。作業小屋や納屋も、構造などによっては建物に当たります。小さな物置などは建物に該当しない場合もありますが、その場合でも管理・処分を妨げる工作物として不承認の対象になることがあります
  • があり、通常の管理に過分の費用や労力を要する土地は不承認になり得ます(法5条1項1号)。勾配30度以上かつ高さ5メートル以上が政令の基準です(施行令4条1項)
  • 地上の工作物・車両・樹木その他の有体物で管理・処分を妨げるものがあると不承認になり得ます(同2号)。放置された農機具、獣害防止柵、崩れた作業道などが問題になります
  • 地下の埋設物(同3号)。古い基礎、埋めた廃材など
  • 隣地の所有者などと争訟によらなければ管理・処分できない土地(同4号)
  • 土砂の崩壊や地割れなどの災害が発生し、または発生するおそれがある土地鳥獣や病害虫の被害が生じ、または生ずるおそれがある土地(法5条1項5号、施行令4条3項1号・2号)

山林では「手入れの状態」も審査されます

境界がはっきりしていても、それだけで承認されるわけではありません。 森林については、次の不承認要件があります。

主に森林として利用されている土地のうち、その土地が存する市町村森林整備計画に定められた事項に適合していないことにより、適合させるために追加的に造林、間伐又は保育を実施する必要があると認められるもの(施行令4条3項3号)

長年手を入れていない人工林は、ここで引っかかる可能性があります。 間伐が必要な状態のまま放置されている、造林すべき区域が裸地のままといった場合です。市町村森林整備計画は市町村で確認できますので、申請を考える段階で、山の現況が計画に合っているかを確かめておいてください。

却下要件と不承認要件の違いは、費用の面で重要です。 却下要件に当たると申請そのものができませんが、不承認要件は申請して審査を受けたうえでの判断になります。審査手数料14,000円は不承認でも戻りません。

国庫帰属とは別に、森林法と農地法の届出があります

ここは見落とされがちですが、相続で山林や農地を取得した時点で、国庫帰属を使うかどうかとは関係なく発生する届出です。期限も窓口も違います。

山林を相続したら …… 90日以内・市町村の長

地域森林計画の対象となっている民有林について新たに所有者となった方は、市町村の長に届け出なければなりません(森林法10条の7の2第1項)。

期限は法律ではなく省令にあり、所有者となった日から90日以内と定められています(森林法施行規則7条1項)。添付書類は土地の位置を示す地図登記事項証明書など届出の原因を証明する書面です。

届出をしなかった場合や虚偽の届出をした場合は、10万円以下の過料と定められています(森林法213条)。遺産分割が終わっていない段階では、法定相続人の共有として届け出ることになります。

すべての山林が対象ではなく、「地域森林計画の対象となっている民有林」に限られます。 対象かどうかは市町村でご確認ください。

2026年4月から、届出書の様式が改正され、所有者となった方の国籍等を記載することになりました。 様式は市町村ごとに取扱いが異なる場合がありますので、最新のものは林野庁「森林の土地の所有者届出制度」と、お住まいの市町村でご確認ください。

農地を相続したら …… おおむね10か月以内・農業委員会

農地を相続で取得した場合、農地法3条の許可は不要ですが、その農地がある市町村の農業委員会への届出が必要です(農地法3条の3)。

条文上の期限は「遅滞なく」ですが、農林水産省は「権利を取得したことを知った時点からおおむね10か月以内」という解釈を示しています(農地法関係事務に係る処理基準)。

この届出は、権利取得の効力を生じさせるものでも、相続登記の代わりになるものでもありません。 相続登記は別に必要です。これらの届出は、同じグループのARIA行政書士事務所がサポートします(司法書士法人とは別の事務所となるため、ご契約と費用は分けてご案内します)。

90日と10か月、市町村の長と農業委員会。 山と田畑の両方を相続された場合は、この2つを取り違えないようにしてください。

和歌山での申請の進め方

申請先は土地の所在地を管轄する法務局・地方法務局(本局)です。和歌山県内の土地であれば和歌山地方法務局になります。

おおよその流れは次のとおりです。

  1. 事前相談(予約制・任意) …… 対面のほか、電話やウェブでも相談できます。要件に不安がある山林・農地では、特におすすめします
  2. 申請書・添付書類の提出 …… 位置図、写真、印鑑証明書などを添え、審査手数料を納めます
  3. 書類審査・実地調査 …… 担当官が現地を調査します
  4. 承認・負担金の通知
  5. 負担金の納付 …… 通知が到達した日の翌日から30日以内。納めた時点で所有権が国に移ります。期限を過ぎると承認の効力が失われます

和歌山地方法務局は、この制度の標準処理期間を8か月としています。 書面審査だけでなく現地調査を行うため一定の期間がかかり、これを超える場合もあるとされています。

山林では、この8か月の前に境界確認の期間が乗ります。 隣地所有者の連絡先を調べるところから始めると、申請にたどり着くまでに数か月かかることも珍しくありません。相続が起きたら早めに着手してください。

国に引き取ってもらう以外の選択肢

要件を満たすことと、国庫帰属が最善であることは別の話です。 和歌山の山林・農地では、次のような選択肢とあわせて比較する価値があります。

方法 向いている場合 注意点
相続土地国庫帰属制度 買い手がつかない山林・原野 要件審査あり。審査手数料は戻らない。森林は負担金が20万円超
売却 道がついている、平地に近い、隣地の方が買い足したい 仲介手数料・測量費がかかることがある。農地を農地のまま売るには、原則として農業委員会の許可が必要(農地法3条)。転用して売る場合は転用の許可・届出を別途確認
森林組合への相談 手入れを続けたいが自分では管理できない 手放せるわけではない。地域の組合により対応が異なる
農地中間管理機構・農業委員会への相談 耕作できる田畑で、借り手を探したい 荒れた農地は引き受けが難しい
市町の空き家バンク 家屋とセットで手放したい 制度の有無・条件が市町ごとに違う
相続放棄 負債が多い相続 その土地だけでなく全財産を放棄。原則として、自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内

特に混同されやすいのが相続放棄との違いです。相続放棄はプラスの財産も含めて一切相続できなくなりますが、国庫帰属制度は、ほかの財産は相続したうえで、その土地だけを手放せます。

隣の山の所有者に声をかけたら話がまとまった、というのは実際にあります。 境界の問題が同時に解消することもあるため、売却の可能性は一度確かめる価値があります。売却の見込みを調べたい場合は、グループ会社の株式会社ARIA Partners(宅地建物取引業者)にご相談いただけます(任意です)。

よくあるご質問

Q. 登記が祖父の名義のままです。国庫帰属の申請はできますか。

A. 相続登記が済んでいなくても、申請自体は可能です。 ただし相続登記には別に申請義務がありますので、あわせて進めることをおすすめします。山林では、代々名義が変わっていないケースがよくあります。

Q. 山を何筆も相続しました。審査手数料は筆の数だけかかりますか。

A. 審査手数料は土地1筆につき14,000円で、申請者の人数では増えません。複数の土地を申請する場合は原則として筆数分が必要です。ただし、隣接する同じ種目の土地については、複数筆を一つの土地とみなして負担金を算定できる特例があります(施行令6条)。細かく分筆された山林では効いてきます。

Q. 境界の杭が一本もありません。もう無理でしょうか。

A. 境界標がないことだけで直ちに却下されるわけではありません。 現地で範囲と境界点を示せることが必要で、目印の設置を求められる場合があります。隣地所有者の立会いや境界確認書は必須の添付書面ではなく、隣地所有者への確認は法務局が照会して行います。 まずは事前相談で、その土地について何が必要になるかを確認するのが近道です。

Q. 何十年も手入れをしていない山です。境界さえ分かれば大丈夫ですか。

A. 境界だけでは足りません。 市町村森林整備計画に適合しておらず、適合させるために追加の造林・間伐・保育が必要と認められる森林は、不承認の対象です(施行令4条3項3号)。手入れの状態も審査されます。

Q. 作業小屋が建っています。

A. 構造などによっては建物に当たり、その場合は申請できません(却下要件)。取り壊して更地にすることが前提になります。小さな物置などは建物に該当しない場合もありますが、その場合でも管理・処分を妨げる工作物として不承認になることがあります。解体費用まで含めて、売却などと比較してください。

Q. きょうだいの共有になっています。

A. 共有者全員で共同して申請する必要があります。 共有者の中に相続で持分を得た人がいれば、売買などで持分を得た共有者も一緒に申請できます。自分の持分だけを引き取ってもらうことはできません。

Q. 森林法の90日の届出をしていませんでした。

A. 森林法213条は10万円以下の過料と定めています。気づいた時点で市町村にご相談ください。 相続登記や国庫帰属の検討と一緒に整理するのが現実的です。

まとめ

  • 森林は必ず面積算定。 最小でも21万円、1ヘクタールで36万7,000円。ただし上限はなく、50ヘクタールなら331万1,000円
  • 農地も、農用地区域内などだと面積算定になる。市町村の農政担当課で確認できる
  • 山林で課題になりやすいのは境界(却下要件・法2条3項5号)。ただし測量も隣地所有者の立会いも必須ではなく、隣地への確認は法務局が照会する
  • 境界だけでは足りない。 市町村森林整備計画に適合せず追加の造林・間伐・保育が必要な森林は不承認(施行令4条3項3号)
  • 審査手数料14,000円は不承認でも戻らない。事前相談を使うこと
  • 山林の相続には森林法の90日以内・市町村の長への届出、農地にはおおむね10か月以内・農業委員会への届出がある
  • 和歌山地方法務局の標準処理期間は8か月。境界確認の期間はこの前に乗る
  • 国庫帰属が使えることと、それが最善であることは別。売却・森林組合・農地中間管理機構と比較する

山や田畑をどうするか、決まっていない段階でご相談ください

次のようなご相談を承っています。

  • 相続した山林・農地が、国庫帰属制度の対象になりそうかの事前確認
  • 負担金がいくらになるかの試算(森林・農地の区分の見立てを含む)
  • 承認申請書・添付書類の作成、法務局への提出のサポート
  • 名義が祖父母のままになっている山林・農地の相続登記
  • 境界の確認・測量が必要な場合の、土地家屋調査士との連携
  • 森林法・農地法の届出の要否の整理

なお、承認申請は申請者ご本人または法定代理人が行う制度で、司法書士が任意代理人として申請そのものを代理することはできません。当法人は、申請書類の作成や使者としての提出など、申請に必要な実務を幅広くお手伝いします。

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初回のご相談は無料です。 「国庫帰属を使う」と決めている必要はありません。売却も含めて、その土地にとって現実的な方法を一緒に整理します。

※本記事は2026年9月時点の法令・公表情報に基づく一般的な解説です。負担金の算定方法、標準処理期間、要件の運用は変更されることがありますので、最新の内容は法務省および和歌山地方法務局の公表情報をご確認ください。負担金の区分は現況を踏まえて判断され、記事中の試算は目安です。承認申請は申請者本人または法定代理人が行う手続きです。境界確定・測量は土地家屋調査士、税務は税理士、土地の売却は宅地建物取引業者(株式会社ARIA Partners等)、農業委員会や市町村への届出はARIA行政書士事務所(司法書士法人とは別の事務所)が対応します。これらへの依頼は、それぞれの専門家との別個の契約となり、当法人の司法書士業務の受任条件とするものではありません。記載は執筆時点の法令に基づくもので、結果を保証しません。

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