「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」と「数次相続(すうじそうぞく)」は、名前も似ていて混同されがちですが、誰が・いつ亡くなったかによって、相続人になる人がまったく変わります。ここを取り違えると、遺産分割協議に参加すべき人を間違えてしまうこともあります。本記事では、両者の違いを整理します。
代襲相続とは(被相続人の“相続開始以前に”子が亡くなっている場合)
本来相続人になるはずだった子が、被相続人の相続の開始以前に亡くなっている場合に、その子(=被相続人から見て孫)が代わりに相続することを代襲相続といいます(民法887条2項)。
条文は「先に死亡したとき」ではなく「相続の開始以前に死亡したとき」と定めているため、同時に亡くなった場合(同時死亡)も含みます。
なお、事故や災害などで複数の方が亡くなり、どちらが先に亡くなったか分からない場合には、同時に亡くなったものと推定されます(民法32条の2)。この場合、亡くなった方同士の間では互いに相続が起きません。たとえば被相続人とその子が同時死亡と推定された場合、子に子ども(被相続人から見て孫)がいれば、その孫が代襲相続人になります。
- 代襲が起こる原因:子の代襲では、死亡のほか、相続欠格・廃除によっても生じます。兄弟姉妹の代襲では、死亡または相続欠格が問題となります(廃除の対象は遺留分を有する推定相続人に限られ、遺留分のない兄弟姉妹に廃除はないためです)。一方、相続放棄では代襲は起こりません(民法939条)。
- 範囲:子の系統(直系卑属)では、孫、ひ孫へと下へ再代襲します(民法887条3項)。これに対し、兄弟姉妹が相続人の場合の代襲は甥・姪の一代限りで、その子には及びません(民法889条2項は887条2項のみを準用し、3項を準用していないためです)。
- 例外:民法887条2項ただし書により、被相続人の直系卑属でない者は代襲相続人になれません。たとえば、養子縁組より前に生まれていた養子の子は、原則として養親の直系卑属にあたらないため代襲相続しません(その子自身が養親と養子縁組をしている場合などは別です)。
数次相続とは(被相続人の“後に”相続人が亡くなった場合)
被相続人が亡くなった後に、遺産分割や登記が済まないうちに相続人が亡くなり、相続が積み重なるのが数次相続です。
決定的な違いは「亡くなった順番」
死亡を原因とする典型例では、被相続人の相続開始時に本来の相続人が既に亡くなっていたか(代襲)/相続開始後に亡くなったか(数次)が、両者を区別するポイントです。順番が違うだけで、財産を受け継ぐ人が変わります。
なお、前述のとおり、代襲相続は死亡だけでなく、相続欠格や廃除によって生じる場合もあります。
亡くなった順番で整理すると
| 亡くなった順番 | 呼び方 | 誰が相続人に加わるか | |
|---|---|---|---|
| ケースA | 父 → 祖父(父が先) | 代襲相続 | 孫が、父の代わりに |
| ケースB | 祖父 → 父(祖父が先) | 数次相続 | 母と子が、父の相続人として |
違いは順番だけですが、ケースBでは母が相続人に加わります。 次の項で、同じ家族構成で金額がどう変わるかを見てみます。
相続人の範囲・法定相続分がどう変わるか
たとえば同じ家族構成でも、亡くなる順番で結果が変わります。
- 代襲のケース:子が先に死亡していれば、その孫が親の相続分をそのまま引き継ぎます(孫が複数なら頭数で分けます)。
- 数次のケース:相続人が後から死亡していれば、その人が受けるはずだった相続分について、さらにその配偶者や子が相続人として加わります。
同じ家族で、順番だけを入れ替えてみます
次の設定で考えてみます。
- 亡くなった方(被相続人)=祖父。遺産は1,200万円
- 祖父の子=父と叔父の2人
- 父には、妻(母)と子2人(あなたと妹)がいる
- 祖父の妻(祖母)は既に亡くなっており、このほかに祖父の子や父の相続人はいないものとします。遺言・相続放棄・特別受益・寄与分はないものとし、法定相続分で計算します
【ケースA】祖父より先に父が亡くなっていた=代襲相続
| 相続人 | 相続分 | 金額 |
|---|---|---|
| 叔父 | 2分の1 | 600万円 |
| あなた(代襲) | 4分の1 | 300万円 |
| 妹(代襲) | 4分の1 | 300万円 |
父が受けるはずだった2分の1を、子2人が頭数で分けます。母は相続人になりません。
【ケースB】祖父の後に父が亡くなった=数次相続
| 祖父の遺産について権利を持つ人 | 相続分 | 金額 |
|---|---|---|
| 叔父 | 2分の1 | 600万円 |
| 母 | 4分の1 | 300万円 |
| あなた | 8分の1 | 150万円 |
| 妹 | 8分の1 | 150万円 |
父が祖父の死亡時に取得した、祖父の遺産に対する2分の1の権利(600万円相当)が父の相続財産となり、母と子2人に承継されます。遺産分割前の段階では、父が特定の600万円を受け取っていたわけではなく、祖父の遺産に対する法定相続分の権利を持っていた、ということです。
※上記は法定相続分による計算例です。遺産分割協議で相続人全員が合意すれば、必ずしも法定相続分どおりに分ける必要はありません。また、遺言、相続放棄、特別受益、寄与分などがある場合は結論が変わることがあります。
決定的な違いは、母が入るかどうかです
並べてみるとはっきりします。
この家族構成では、代襲相続の場合、母は祖父の相続人になりません。数次相続の場合、母は(祖父の相続人ではなく)父の相続人として、父が持っていた祖父の遺産に関する権利を承継し、しかも子より多く取得します。
これは金額の問題だけではありません。遺産分割協議に参加すべき人が変わるということです。数次相続なのに代襲だと思い込んでいると、母を除いたまま協議をしてしまいます。必要な当事者が参加していなければ、原則として遺産分割協議は有効に成立せず、その協議書に基づく相続登記もできません。
再婚や養子縁組が絡むとさらに複雑になりますので、まずは戸籍で事実を確定させることが出発点になります。
手続き・必要書類の違い
どちらのケースかによって、集めるべき戸籍の範囲や、遺産分割協議に参加する人が変わります。特に数次相続では複数世代の戸籍が必要になり、和歌山の実家など遠方の相続では収集の負担が大きくなりがちです。戸籍収集や預貯金等の名義変更も含めて相談したい方は、相続手続き丸ごとサポート(遺産整理業務)もご覧ください。
司法書士に相談するメリット(自分が相続人か・誰と分けるかの整理)
代襲か数次かの判断は、一般の方には難しく、間違えると協議に加えるべき人を見落として登記できないことにもつながります。当法人では次のようにサポートします。
- 受任した相続登記・相続手続きに必要な範囲での戸籍等の収集と、相続関係の確認・整理(自分が相続人か、誰と分けるか)
- 代襲・数次の判断と、法定相続分の整理
- 遠方・多人数の場合の、遺産分割協議書の作成、署名押印・郵送の段取り、相続登記手続きの進め方のご案内
「自分が相続人なのかどうかも分からない」段階でも、まず相続関係を整理するところからお手伝いできます。
なお、遺産の分け方について相続人間に争いがある場合や、他の相続人との交渉が必要な場合には、司法書士が代理して交渉を行うことはできないため、提携弁護士への相談をご案内します。
よくあるご質問
Q. 相続放棄した子の子(孫)は代襲相続しますか?
A. しません。代襲が起こるのは死亡・相続欠格・廃除の場合で、相続放棄では代襲は生じません。
Q. 兄弟が相続人ですが、その兄弟も亡くなっています。甥や姪は相続しますか?
A. 兄弟姉妹の代襲は甥・姪の一代限りで生じます。ただし亡くなった順番によって代襲か数次かが変わるため、確認が必要です。
Q. 自分が相続人かどうか分かりません。
A. 家族関係と戸籍から相続関係を整理します。お気軽にご相談ください。
まとめ・ご相談
「先か、後か」で相続人が変わる——これが代襲相続と数次相続の違いです。次のようなお悩みがあればご相談ください。
- 自分が相続人になるのかどうか分からない
- 誰と遺産分割の話をすればいいのか分からない
- 亡くなった順番が複雑で、相続分の計算が分からない
- 和歌山の実家の相続人が県外・海外に散らばっている
自分が相続人か分からない段階でも大丈夫です。分かる範囲の家族関係をメモしてお持ちいただければ、まず相続関係の整理からご相談いただけます。
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※本記事は一般的な制度・手続きの解説です(2026年9月時点)。相続分の計算は事案により異なります。税務判断が必要な場合は、税理士への相談をご案内します。相続人間の交渉や紛争対応が必要となった場合は、依頼者の希望と同意に応じて提携弁護士をご案内します。税理士・弁護士との契約は、それぞれの専門家との別個の契約となります。不動産の売却・仲介が必要な場合は、ご希望に応じてグループ会社である株式会社ARIA Partnersまたは外部の宅地建物取引業者をご案内できます。査定・仲介等の不動産業務も司法書士業務とは別個の契約であり、これらへの依頼を司法書士業務の受任条件とするものではありません。記載は執筆時点の法令に基づくもので、結果を保証しません。